私が見た戦争

私が見た戦争 の詳細

最初パラパラとめくったとき、横書きなのに右から左へ進むので、「なんだこれは」と思った。が、横書きはほとんどが写真のキャプションで、「はじめに」と「あとがき」は、縦書きになっている。この本は写真が主役で、キャプションが脇役と言っていいだろう。写真を見ながらキャプションを読んでいくと、はじめのうち、主観的な感想が多すぎるように感じたが、読み進むにつれて、違和感がなくなった。言葉が写真の衝撃を和らげてくれているからだろう。笑顔の写真が出てくるとほっとするが、「戦場での笑顔」にはぞっとした。キャプションに <<戦闘の後に解放軍兵士の死体が残っていた。この場の戦闘はアメリカ側の勝利である。勝利者たちは満足した表情を浮かべている。どの戦争も同じだろう。このアメリカ兵たちも本国へ戻れば一般市民である。戦争は人間を変える。>> とある。「死体」というと、時代劇で切られて倒れた男のようなものを想像するかもしれないが、写真に出ているのは、肉体の破片の寄せ集めである。平和憲法の国・日本でも、「巨悪に立ち向かうには、ときには戦争も必要だ」という考え方が、当たり前になってきている。それに理屈で反論するのは難しい。著者は「反戦」について理論的には語らないが、こうした写真を見ていると「国を守る気概」というような言葉のそらぞらしさを実感する。本書の著者は『サイゴンのコニャックソーダ』も著している。